" Where are our gifts @versace?? "
あるグラフィティ・ライターが、ヴェルサーチに牙を剥いた。
モスクワを拠点に活動する「Rasko」。
スピード・センス・スキルと3拍子揃った、今最も旬なライターの一人だ。
活動の幅は国外にも及び、6月もミラノに作品を残した様子をinstagramに投稿していた。
そんな中、今日7月29日、彼の作品がヴェルサーチの新作紹介の背景として、無断で使われていたことが明らかになった。
Raskoはこれに反応し、以下の画像とテキストを投稿。 グラフィティをアートとみなしていないと憤った。
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‼️Attention Guys‼️Have you seen new Versace «Urban Look» compane?These guys used my dopeass piece as a background for photoshoot and don’t even tag me and my homie @rate_nls! Where are our gifts @versace?? That’s really frustrating, they don’t consider graffiti as an art, that every writer has an a copyright for each dope piece! It’s like HM-Story but a New level!! And I offer you to unite under hashtag #bombversace and flood their posts at @versace account. Let’s drop bombzzzz💣💣💣 ---
(出展:Rasko1)
過去にはH&MやMarc Jacobsも グラフィティ・ライターがこうしたトラブルに見舞われることはしばしばある。
今年3月にはRevokの作品がH&Mのキャンペーンビジュアルに使用され物議を醸した。
当初H&Mは「作品自体が違法なプロセスで制作されたものであり、著作権保護の対象には当たらない」と主張しており、訴訟も辞さない構えだった。
(H&Mのキャンペーンビジュアル)
しかし、KAWSを始めとするアーティストやキュレーターの批判を浴び、結果的にどこに描かれたものに関わらず彼らの権利を尊重すると主張を改めた。
(出展:therealswizzz)
また、2013年にはkidultがMarc Jacobsの店舗をBOMB。
Marc Jacobsが、そのビジュアルをT-shirtsにして販売する…といった出来事があった。
(出典:twitter)
(更にT-shirtsが686ドルで売られると、kidultは再び店舗に「686」とBOMB。Marc Jacobsはそれを再びT-shirtsとして販売した。)
グラフィティライターの権利とは
「違法なものに権利なんてあるの?」
そういった疑問を持つ人も少なくないかもしれない。
しかし、アーティストの権利が法的に認められたケースもある。
(出展:FNMNL)
かつてグラフィティの名所として知られた5Pointz。
建物の所有者がビルを白塗りにしたところ、アーティストが反発。
訴訟になっていたが2018年2月に、その芸術的価値認められる結果となった。
多くの人々がその芸術的価値を認めており、建物の取り壊しはV.A.R.A(美術家人権法)に違反、建物の所有者が賠償金約670万ドル(約7億2000万円)を支払う、といった結末だ。
もちろん歴史的な価値や文脈によって、解釈は異なるだろう。
しかし、この判例は多くのアーティストやキュレーター、コレクターの間に広がっており、ただ単に法的な解釈のみで世論と対峙することの危険性を示唆している。
5Pointzの事例については以下に詳しく書かれている。
「大山エンリコイサムが読み解くファイブポインツ裁判と捨象された匿名性」(美術手帖)
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/12171
Raskoの一件もアーティストへの配慮・尊重を欠いた結果に他ならない。
今もブランド、クリエイティブ・ディレクター、デジタル・マーケッターが週末を返上、慌ただしく連絡を取り合い、対応を協議しているかもしれない。
もしヴェルサーチに今後もハイブランドとしてクリエイターと向き合う準備があれば、だ。
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