【exhibition】変容する周辺 近郊、団地

昭和の終わりに生まれた僕らからすると、団地は日常そのものだった。

学校が終わると団地の前でドッヂボール、缶蹴り、家の中ではスーパーファミコン。

高層階からモノを落としてドキドキしたり、クラスの女子に会えるんじゃないかとソワソワしてみたり。

今回訪れた「変容する周辺 近郊、団地」では、そんな団地が今どうなっているのか?

7人のアーティスト達が「団地の今」を切り取っている。

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舞台は品川八潮パークタウンの集会所。 本展のキュレーションを手がけている石毛健太が育った場所だという。

大井町からバスに乗り込むところから、少し懐かしい記憶が蘇ってくるようだった。

秘密基地を見つけるように、団地の中をウロウロしながら集会所に辿り着く。

少し早く着いてしまったので、近くのブランコに揺られていると、住民と思われる小学生達が一生懸命水遊びをしていた。もちろん半袖半ズボンでだ。

空を見上げると建物が深い青をトリミングしていた。 整然と並んだ窓の奥にはそれぞれの暮らしがあるのだろうが、それを感じさせずに、どこか画一的な印象を与えるように立ち並んでいた。

集会所に入ると目に飛び込んできたのは、EVERYDAY HOLIDAY SQUADの作品だ。

入口に突如屋台が佇んでいる。そこには数々のカレーレシピが掲示されていた。

団地に住む人々の、それぞれのレシピだ。

団地と言うハードが持つ強烈なフォーマット故か、 そこで営まれる生活も画一的な印象を抱かれがちだ。

ただ実際は様々な生活水準やバックグラウンドを持った人々が、それぞれの生活を営んでいる。

レシピの一枚一枚に書かれた文字からそんなことが読み取れた。

奥の部屋は、それ全体がyang02の作品。

茅ヶ崎市に存在するこれまた”パークタウン”のリアルを、実父が語っている。 音声はその場でテキスト化され、断片的にtwitterで投稿されていく。

高齢化が進む団地には案外悲壮感がないという。 同世代達が集い、また新たなコミュニティが築かれていく。 そんな暮らしは確かにちょっといいのかもしれない。

「介護だなんだ、そんな不安は人の心の中にしか存在していない」 今この瞬間を前向きに力強く生きていく、団塊世代の勢いを感じた。

反対側の部屋に入ると、キュレーターの石毛健太の一筆。

集会所にホワイトボード。整った文字間からその人柄やこの展示に込められた想いが伝わってくるようだった。

右手に見えるのが写真家・名越啓介による多国籍な公園団地の作品。

愛知県豊田市にある「保見団地」に住む、日系ブラジル人やそのコミュニティを捉えたものだ。

11月2日、改正入管法が閣議決定された。 事実上の移民政策とされるこの法案により、外国人と日本人の融和や権問題がまた注目されるだろう。

この作品はリアリティをもってして、私たちが持つ外国人への意識に変革を求めてきているようだった。

ちなみに保美団地のプロジェクトはVICEでも取り上げられている。 The People & Food of the Homi Projects ー名越啓介が出会った保見団地の日々ー

BIENによる立体作品。

中島晴矢による作品。

団地を舞台にしたHipHopアーティストは多く、ANARCHYが向島の市営団地、KOHHが豊島五丁目団地あたり。

KOHHが自らBUFFしたという団地の壁もこれまたVICEで紹介されている。 団地発!東京のアングラ ヒップホップ - Rising From the Tokyo Projects

ryusel etouと垂水五滴による作品は、様々なディスプレイに映し出されたCGを鑑賞しながら、そのCGとリンクしたテキストを読めるというもの。

この日は運悪くWiFiが読み込めず、そのストーリーに触れることはできなかったが、また機会があることを願いたい。

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会期中はキュレーターの石毛健太が団地内を案内してくれるというスペシャルなプログラムもあり、また、足を運ぼう。と決めていたが叶わず終い。

昭和に隆盛し平成を駆け抜けた団地というフォーマット。 今で言うマンション(?)スマートフォン(?)程に、人々の生活に入り込んでいる。

その団地をモチーフに制作された作品からは、それぞれ多くの気づきを得ることができた。

これをいかにアップデートできるか? 10年・20年後の答え合わせが楽しみになる展示だった。

なお、本展のサポートについているUR都市機構は、ハードによるアプローチで実際にこの”アップデート”に取組んでいる。

茅ヶ崎市にある浜見平団地は30ヶ年以上の計画を持ってアップデートされつづけ、2020年以降に迎える市の人口減少トレンドに立ち向かっている。

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展覧会概要 会期: 2018 年10月21 日(日) – 11月04 日(日) 時間:12:00 – 19:00

アーティスト:EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、BIEN、yang02、名越啓介、中島晴矢、ryusel etou、垂水五滴 会場:〒140-0003 品川区八潮5丁目6−37号棟集会所

主催:変容する周辺 近郊、団地展実行委員会

企画:URG(Urban Research Group) aka 石毛健太

企画協力: SIDE CORE 、UR都市機構

展覧会コンセプト 湾岸線を運転すると見えてくる、東京湾沿岸の埋め立て地に広がる団地群。それは1960年代以降、高度経済成長をきっかけとした、都市の急激な人口流入に対応するために造成された「近郊団地」である。 前東京五輪開催から、50年にわたり静かに都心に働く人々の生活を支えてきた。しかし、未曾有の経済成長、バブルの崩壊、失われた10年、グローバリズムの到来、インターネットの普及、東日本大震災という数多の節目を超え、そこに暮らす人々の暮らしと文化は変化しはじめている。これまで団地を形成した「中産階級の核家族」達は姿を消しはじめ、その代わりに、外からやってきた未知の感性が入り混じり、静寂に立ち並ぶコンクリートの箱の中から異形な文化が立ち上がってきている。それらは巨大な求心力を生み、かつて近郊団地がもっていた「中心の周辺」という構造を壊し、都心に向かって文化を侵略し始める。 かつては住宅地として設計されたそこで長い年月の末、現在何が起こり、始まろうとしているか。様々なメディア、年齢の作家たちが都市の近郊、埋め立て地、団地を探っていく。